マンション購入等に伴う消費税の還付を受ける節税スキームにつき、これまで度々改正が加えられその抜け穴が封じられてきましたが、令和2年度の税制改正大綱により完全にシャットアウトされる模様です。
元々この還付スキームは、以下の点で消費税の趣旨と異なるものでした。
- 賃貸マンション購入に係る消費税の還付を受ける
賃貸マンションの購入に際し、本来ならば免税事業者であるものが課税事業者を選択し、又は元々課税事業者であるものが、当該購入に係る消費税が非課税売上(マンション収入)に対応するもののため還付(仕入税額控除)できないものを、自販機の設置や金地金等の譲渡による課税売上を計上することで課税売上割合を95%以上とし、還付(仕入税額控除)を受けることができるようにする。
- 調整対象固定資産の消費税調整を免れる
上記1の還付を受けた場合でも、翌年以後非課税売上(マンション収入)の計上により課税売上割合が大きく落ち込み、3年間の課税売上割合の平均がマンション購入年の割合(95%以上)から一定割合以上落ち込めば、マンション購入に係る消費税のうちその差額に相当する消費税の追加納付が生じます。しかし、その3年目に免税事業者又は簡易課税事業者に変更することでその納付を免れることが可能となります。
これに対し、国は以下の改正で対策を講じてきました。
- ① 平成22年度改正
免税事業者が課税事業者になることを選択し、又は新規に設立された資本金1千万円以上の法人が、単価100万円以上の固定資産等(以下「調整対象固定資産」)を購入したうえで一般課税により申告した場合には、購入年から3年間は免税事業者及び簡易課税制度を選択することができなくなりました。
- ② 平成25年度改正
課税売上高が5億円超の事業者に支配される新規に設立された法人が、調整対象固定資産を購入したうえで一般課税により申告した場合には、購入年から3年間は免税事業者及び簡易課税制度を選択することができなくなりました。
- ③ 平成28年度改正
課税事業者が単価1000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産を取得したうえで一般課税により申告した場合には、購入年から3年間は免税事業者及び簡易課税制度を選択することができなくなりました。
これらのように改正が加えられましたが、金地金等の売買を大量に繰り返し行う事で依然課税売上割合を95%以上に維持できることから、還付スキームを根絶することはできず、今年度の税制改正により居住用賃貸マンションの購入等に係る消費税をピンポイントで還付(仕入税額控除)不可能とする改正が行われる予定です。
これにより、マンション購入等に係る消費税還付スキームは利用できなくなると想定されますが、これまで改正された上記制度は依然として残ります。現在の消費税法は、これら還付スキーム対策によりかなり複雑化しており、本来還付スキームを想定していない事業者にまで広く影響を与えています。また、令和元年10月より複数税率も導入され、増々消費税は複雑なものとなっているため、実務者において負担が増すばかりの現状制度を何とかしなければなりません。