税務調査における寄附金認定課税の可能性

日本経済新聞によりますと、中日新聞社に対し名古屋国税局の税務調査が行われ、以下のケースを寄附金とみなして申告漏れを指摘された模様です。

「中日新聞社は首都圏などで発行する東京新聞の勧誘営業を外部の業者に委託し、一部で営業活動がないのに販促費を支払っていた。同社は経費に計上したが国税局は寄付とみなしたとみられる。」(令和元年12月26日付 日本経済新聞夕刊)

会社が自社製品の販売を促すため委託先へ販促費を支払う場合、経理上「販売促進費」として会計処理が行われ、税務上は損金処理されますが、このケースでは委託業務を行っていないにも関わらず、販促費を支払っていたということです。

では、その支払いはどのような背景でおこなわれていたのでしょうか?

  • 1.その販促費を担当者が確認せず一律に委託先(過去に取引があった先も含む)へ払い続けていた。
  • 2.委託先からの販促費に係る架空請求に対し、担当者が内容を確認せず支払っていた。
  • 3.グループ会社である委託先に対し、会社が自社の利益を移転するため意図的に販促費と偽り支払っていた。

1では、単に担当者の怠慢による支払ミスと想定されます。販促費は本来発生し得ないため、当該金額は返還を受けなければなりません。したがって、経理上は「仮払金」に該当するかと思います。

2では、委託先に騙された形となりますが、担当者の未確認によるミスでもあります。こちらも誤った支払いのため、返還を受けなければなりません。

これに対し、3では明らかな租税回避行為となります。例えば、グループ会社である委託先に繰越欠損金があるような場合には、会社は税金の軽減を図るため、その利益を委託先へ移そうとする意図が働くことから、このような処理で否認されるケースは多いです。

なお、自社の利益を資本関係の無い他社へ移転することは、単に自社が損をするだけなので想定しにくいかと思います。

したがって、上記1,2では寄附金とみなされる可能性は低く(返還請求をしなければ寄附金となりますが。)、重加算税が課されていることからも、3のような背景だったのかもしれません。

仮に、委託先がその会社に100%所有されている完全子会社なら、寄附金認定された場合にはグループ法人税制によりその委託先での受取販促費は全額益金不算入となる点に留意して下さい。

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